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東京地方裁判所 昭和54年(ワ)8346号・昭55年(ワ)2769号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

三無断増改築に基づく解除について

1 抗弁2の(一)(増改築)の事実中、(1)(塀と門扉の設置)、(2)(玄関の増築・模様替―その規模を除く。)、(3)簡易屋根による物置の設置)、(4)(渡廊下の設置)、(5)(ビニール製波板による増築)、(9)(和室の洋室事務所への改造)及び(11)(第二建物二階和室の壁の打ち抜き)の各事実並びに(10)のうち便所の床の張り替えの事実については当事者間に争いがなく、(8)(第一建物二階和室の壁の打ち抜き)の事実は、<証拠>によりこれを認めることができるが、その余の事実についてはこれを認めるに足りる証拠がない。

2 ラザーは、右増改築につき三京の承諾を主張し、上田本人は、右主張にそう供述、なかんずく右(4)、(8)及び(11)については旧契約締結時に承諾を得、(1)、(2)及び(9)については工事をする際に承諾を得た旨の供述をするが、右供述は壁来の証言に照らすとたやすく信用できない。もつとも、<証拠>によれば、旧契約締結の際、三京はラザーの本件建物一部改築を承諾していたことが認められるが、ラザーのなした前記増改築が右承諾の範囲内であることを認めるに足りる証拠はなく、むしろ<証拠>によれば、前記増改築は右承諾の範囲外であることが認められる。

次に黙示の承諾について、<証拠>によれば、本件建物の隣には三京の代表者であり本件建物の所有者である趙の息子が居住しており、趙自身、年に二、三回同所を訪れることが認められるが、他方、<証拠>によれば、ラザーのなした前記増改築のうち(1)の塀と門扉の設置以外(これらについては後記のとおりその時期を明らかにする証拠がない。)はすべて外部から見えないものであることが認められるから、息子の近隣居住及び趙自身の来訪の事実から、趙が右増改築を認識していたと推認することはできず、また、<証拠>によれば前記塀と門扉の設置は本件契約後になされたものであることが認められる。従つて、三京が本件契約により旧契約を更新したことから前記増改築を黙示に承諾したものと認めることはできない。

他に右承諾の事実を認めるに足りる証拠はない。

3 以上のとおり、ラザーのなした前記増改築は無断増改築というべきであり、そのうち、塀と門扉の設置以外のものについてはその時期を特定するに足りる証拠はないが、本件契約が旧契約を合意更新したものであることについては争いがなく、また右更新により三京が増改築を黙示に承諾したとは認められないことは前記のとおりであるから、仮に右の増改築が本件契約前になされたものであつても、それが賃貸借関係における信頼関係を破壊する不信行為と認められる場合には、三京は、これを理由に、催告をせずに本件契約を解除できるというべきである。

そして、前記認定のとおり、ラザーは本件建物を社員寮として使用するために借り受けたものであつて、旧契約の際二二〇万円の授受があり、<証拠>によれば、本件建物自体社員寮として適当な構造を有し、三京はラザーに賃貸する以前も他の会社に同様の使用目的で本件建物を賃貸していたことが認められるから、ラザーが社員寮としての使用目的にそつて本件建物にある程度の変更を加えることは、それが社会通念の範囲内である限り是認されるべきであると考えられるところ、<証拠>によれば、前記認定の増改築のうち(3)、(5)及び(10)のうち床の張り替えは、極めて軽微で復原も容易なものであり、他のものの多くも社員寮として本件建物を使用するうえで有用なものであることが認められるが、他方右証拠によれば、増改築の箇所、内容は極めて多数、広範囲にわたつており、壁の打ち抜き等必ずしも復原が容易でないものも含まれていることが認められ、これに、三京とラザーの本件建物賃貸借関係は昭和五一年に初めて生じ、本件紛争まで約三年の経過があるだけであること、右の短期間に前記の多数の増改築がなされたこと、更に、旧契約の際の契約書には不動文字ではあるが無断増改築禁止の文言があり、三京が承諾した改築内容は図示して明確にされている(<証拠>により認められる。)ところ、ラザーの代表者である上田は、本件建物賃借前に他の賃借建物について無断増改築の紛争を経験しており(<証拠>により認められる。)、右契約書の記載の意味を十分認識していたと推認できること、以上の事実を総合して考慮すれば、ラザーのなした前記増改築は、本件建物の賃貸借関係における貸主三京との間の信頼関係を破壊する不信行為というべきである。

4 抗弁2の(三)の事実(解除の意思表示)については当事者間に争いがなく、前記3の認定事実に照らせば、三京の右解除権の行使をもつて権利の濫用ということはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

三結論

以上のとおり、本件契約は、昭和五五年九月一一日の三京の解除により終了したこととなるから、本件建物につき賃借権確認を求めるラザーの甲事件請求は理由がない。 (鈴木健太)

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